糖尿病の症状はとても気付きにくく、多少血糖値が高いくらいでは殆ど症状がでないのが普通です。このことは糖尿病がよく「沈黙の病気」と呼ばれるゆえんで、糖尿病のこわい点でもあります。つまり症状が全くなくても血糖値が高い状態が続くことにより、体の様々な臓器に障害、合併症を引き起こしてしまいます。
そこで糖尿病で通院中の方は定期的に様々な検査が必要となります。そのような検査の中で重要なものの一つが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー、またはグリコヘモグロビンとも言います)と呼ばれるものです。 このHbA1cは過去1〜2ヶ月の間のその人の血糖のコントロールの状態を反映しています。つまり、ありがたいことに、HbA1cは、その人の過去1〜2ヶ月の間の糖尿病の状態を記憶してくれているのです。このHbA1cの数字が「高い」と、すなわち「糖尿病のコントロールが悪い」ということになります。糖尿病の3大合併症と呼ばれる、細小血管合併症(糖尿病網膜症、腎症、神経障害)の予防には、HbA1c 6.5%未満を目指すように心がけるべきであると考えられています。 また(社)日本糖尿病協会から発行されている「糖尿病健康手帳」にもHbA1cを記載するところがあり、定期的にクリニックや病院で行ったデータを記載していくことで、御自身の血糖コントロールの経過も知ることもできます。
糖尿病で通院中の方は是非、このHbA1cの数字を常に気にかけ、主治医の先生とともにより良い血糖コントロールを目指していくことが大切です。
2011.4.15
日本糖尿病学会糖尿病専門医
奈部 浩一郎