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脳神経外科 >> 平尾 順

 

 「脳ドックで動脈瘤が見つかってしまった! どうしたらいいだろうか?」と言う相談をもちかけられたり、 ご自身が未破裂脳動脈瘤に悩んでいらっしゃいませんか?  現在では、簡単な検査で、脳動脈瘤が見つかることがあります。し かし、見つかった脳動脈瘤をすぐに手術してくれる病院はなかなかありません。 多くの場合、「経過観察しましょう」と言われ、不安な毎日を送られているのではないでしょうか。

 まず、未破裂脳動脈瘤は一般の成人の数%位が有すると言われており、比較的頻度が多い疾患であることを 知ってもらいたいのです。 確かに、脳動脈瘤は、クモ膜下出血をきたす原因です。クモ膜下出血は一旦発生すると、半数近くの方が 死亡するか社会復帰不可能な障害を残してしまう極めて重篤な疾患です。 しかし、破裂しなければ生命に害を及ぼすことはないのです。未破裂脳動脈瘤の何%が破裂するのでしょうか?

 「国際未破裂脳動脈瘤調査」という白人を中心とした研究結果が1998年と2003年に発表されました。 その結果、未破裂脳動脈瘤の破裂率は7mm以下で、 脳の前方にある動脈瘤では年間0.5%以下、7mm以上であれば大きさにより0.5〜8%程度、 脳の後方の瘤では7mm以下では0.5〜0.7%、7mm以上では数%以上と報告されました。

 様々な検討から、未破裂脳動脈瘤の破裂しやすさは、その大きさ、場所、形状、高血圧歴、 喫煙の有無など様々な因子に影響されることが明らかとなりつつあります。

 日本脳神経外科学会では、全国の脳神経外科の施設にインターネットを利用した全国疫学的調査 (UCAS Japan)を行い、現在7千例以上の症例の追跡を行っています。 もうしばらくすれば、東洋人の脳動脈瘤の自然経過がより詳しく発表されると思います。

お悩みの方は、一度脳神経外科を受診されて、ご相談ください。

2007.10.4 平尾 順






 

 学生時代、朝礼の最中に、友人が倒れるのを目撃した方は多いのではないでしょうか?  保健室に連れて行かれ、しばらく休んで教室に戻って来る程度のものです。 世間では「貧血で倒れた!」と言われることが多いようですが、 医学用語での貧血は、輸血を必要とするような赤血球値の低下を貧血と言います。 前出の様な意識消失の原因の多くは、医学的な貧血ではなく、血管迷走神経反射と呼ばれるものです。


 迷走神経反射…聞き慣れない言葉だと思います。 迷走神経とは脳から出る神経の一つで、自律神経系と関係が深い神経です。 内臓(胃腸や心臓、血管など)に分布しておりヒトの生命活動に直接関わっている神経です。

 通常の状態では交感神経と副交感神経が絶妙なバランスをとって内臓などの機能を維持していますが、 何らかの原因で副交感神経が必要以上に活発になると、末梢の血管が拡張して急に血圧が下がり、 脈拍が遅くなります。血圧の低下に伴って脳に向かう血液の量が減ることで、目の前が暗くなり、 意識がもうろうとなって倒れてしまうのです。脳への血流低下が、ある程度の時間以上継続した場合、 体や手足が痙攣することもあります。この状態を改善しようと、その後に交感神経が活発に活動を始めて、 今度は逆に血管が収縮して手足が冷たくなり、発汗し、吐き気が生じるのです。 この時、不安感から、過換気を起こす場合もあります。健康な人でもこの反射が起こることがあります。 たとえば、排便時のいきみ、冷水に顔をつける、嘔吐などの行為で迷走神経が刺激されます。 また、満員電車での不快感、恐怖感、強烈な痛み、採血などでも迷走神経が緊張します。 排尿後や排便後など、腹圧の急激な変化によっても迷走神経が刺激されて、失神が起こることがあります。 循環器系のお薬を内服されている方は、特に、気温が急激に下がった早朝等には、 上記の様な行動に十分な注意をしていくことが望まれます。

2007.9.13 平尾 順






 

 頭部を打撲した後、脳の外側の硬膜下という場所に非常にゆっくりと血液が溜まって、 3週間から1ヶ月位を過ぎた時期に、その血液が脳を圧迫して症状が出現する疾患を、 「慢性硬膜下血腫」と言います。

 頭部への強い衝撃だけが原因になるのではなく、ほとんど記憶に残らないような軽微な 打撲からでも発症することも多々あります。患者さんによっては頭部を打撲したことを 覚えていない場合もあります。一般的には、脳に萎縮が認められる60歳以上の方に生じる病気です。


 症状は、徐々に強くなる頭痛や半身の脱力、歩行障害、物忘れなどが代表的です。 頭を振ると痛いと言うのも、この病気の特徴的な頭痛です。 より高齢者では元気がなくなった、話をしなくなった、物忘れが進んだ、 と言う痴呆症と間違われるような症状が先行してしまうために、発見が遅れる場合があります。 稀ではありますが、血腫の内側に急性の出血が起こったり、 血腫が巨大化してある限界点を超えたりすると、 症状が急激に進行して死亡する危険もあります。

 お酒をよく飲まれる男性に多い傾向がありますが、最近では脳梗塞や心臓病の予防のために 抗凝固療法や抗血小板療法を受けている方にも起こりやすいとされています。

 診断は、外傷の既往と、診察である程度は予想されますが、CT検査ですぐに診断がつきます。 まず、診察する人間が、この疾患を頭の片隅に置いておくことが必要なのです。

 治療は手術です。局所麻酔下で行われます。所要時間は、片側の単純なものであれば、40分程度です。

 症状は、術直後より劇的に改善してきます。圧迫の程度にもよりますが、通常は、 術直後より頭痛は消失し、麻痺などの症状も翌日には改善し、元通りの状態に戻ります。 最も喜ばれる脳神経外科の手術の一つと言えるかも知れません。 早期発見することで、不安な時間を過ごさなくてすみます。

 お心当たりのある方は、脳神経外科を受診してみて下さい。

2007. 8. 2 平尾 順






 

 ジャロンは、てんかんの薬物治療が、制度的多剤治療から教義的単剤治療を経て、 合理的多剤治療に変化したと指摘しています。もう少しわかりやすい書き方をします。

 てんかん治療は伝統的に多剤併用療法でした。 つまり、いろいろな種類の抗痙攣剤を併用することにより、有効性は上昇し、 副作用は減弱すると考えられていたのです。この考え方を制度的多剤治療と言います。 しかし、実際は、有効な抗痙攣剤が少ないために、多剤を併用しないとコントロールできなかったのです。 しかし、現在では、こういった治療は完全に否定され、今では、2剤併用を試みる価値はあるが、 3剤以上の併用は効果が生じることはまれで、副作用が増強すると言われています。 この背景にも、てんかんをコントロールできる薬が増えてきたことがあるのです。 にもかかわらず、現在のてんかんに対する薬物治療の主流は、単剤治療です。 最も重要なのは治療を開始する際に、いかに患者さんに適した抗痙攣剤が選択されるかということです。 最初に選択した薬物でてんかん発作がコントロールができない場合は、他の薬物の単剤治療に変更すべきなのです。

 1990年代になると、新たな抗痙攣剤の開発が報告されるようになり、 合理的多剤治療に関心が寄せられるようになりました。 作用機序の異なる抗痙攣剤の併用が効果を増強させるのであれば、 多剤治療は単剤治療を上回る有効性を示すはずだ!という考え方です。 以前の制度的多剤併用療法に戻ったのではなく、有効な薬剤が増えたことで、 副作用を出すことなくてんかんをコントロールできるケースが出てきたのです。 しかし、未だに、多剤治療による効果の増強を統計的に証明した臨床研究はないようです。 難治性てんかんに対する治療は、試行錯誤を繰り返している状態です。一度、脳神経外科への受診も考えてみて下さい。

2007.7.12 平尾 順






 

 側頭葉てんかんの発作症状はきわめて特徴的です。患者さんのほとんどは、発作が起こると、動作が停止し一点を凝視します。その後、口をぺちゃぺちゃさせたり、手をもぞもぞさせたりなどの独特の動きをします。これを自動症といいます。発作中もしくは、発作の始めに異臭を感じている場合があります。しかし、患者さんはこの発作の内容を全く記憶していません。診断の際に、発作時の詳細な状況を確認することが大切ですので、発作を目撃された方からの情報がとても大切です。発作の前触れとして、こみ上げるような不快感、気が遠くなりそうな感じ、恐怖感などがあります(異臭のことだけ覚えている場合があります)。

 このような側頭葉てんかんの発作を複雑部分発作と呼びます。複雑部分発作は全身けいれん発作などと比べると、若干おとなしい感じがしますが、全般化して全身けいれんに進行していく場合があります。

 てんかんの患者さんの3割近くに、精神症状を伴うとする報告もあり、側頭葉てんかんに頻度が多いとする報告もあるようですが、一定の見解は得られていません。一部の方に、発作が近づくとイライラ感が増し、発作が生じた後は、また安定した感情に戻る傾向がある様に感じています。

 側頭葉てんかんは、上記の発作症状をお聞きするだけで、ある程度の診断が可能です。脳波や、MRI等の検査は、必要な検査ですが、あくまでも補助的検査になります。

 側頭葉てんかんに効果のある抗てんかん剤は、一部のものに限られます。てんかんの充分なコントロールができていない場合、てんかんの分類の見直しが必要であったり、薬剤の変更が必要な時もあります。また、薬剤で発作がコントロールされない難治てんかんの場合は、外科的治療を考慮する必要があります。  心当たりのある方は脳神経外科を受診してみて下さい。

2007.6.7 平尾 順






 

 てんかんは特殊な病気だと考えていらっしゃる方が多いと思います。しかし、人口千人に五人〜一〇人(0.5〜1.0%)の割合で見られるとても多い病気なのです。

 てんかんとは、大脳の神経細胞が無秩序に興奮して起こるものです。神経細胞が興奮すると、その細胞が支配している身体の部分が自分の意思とは関係なく動いてしまいます。この状態がけいれんです。大脳の広い範囲に興奮が広がった場合は、意識がなくなって倒れると同時に、全身のけいれんが生じます。

 てんかんの治療は国際分類に従って行われます。国際分類ではてんかんを部分発作と全般てんかんに分け、それぞれを原因のわからない特発性、原因がはっきりしている症候性に分けています。てんかんの種類によって治療が変わるので、正確な分類診断が必要です。診断には患者さんおよび発作目撃者の話が大切です。患者さんは発作の時に意識がない場合が多く、自分では発作に気がつかないことがあったり、発作時にどんな状態だったのかわからないことがしばしばあります。場合によっては、正確な診断のために、発作目撃者に詳細な状況を確認する必要があります。

 また、てんかんの診断には脳波検査は必要ですが、成人のてんかんの患者さんでは、一回の脳波検査でてんかん様異常波形がみられる方は30%前後しかありません。一方で、脳波の検査を行うと健康な方でも3%前後にてんかん様異常波形を認めます。つまり、脳波検査は十分な検査ではないのです。

 特発性全般てんかんが25歳以上で初めて起こることは稀で、成人のてんかんの殆どは外傷や脳血管障害、脳腫瘍等の原因で起こります。このような病変はCTやMRIで発見することができます。

 つまり、てんかんの患者さんの治療には、まず、詳細な発作の状態の把握が最も大切で、その上で、脳波検査、画像検査等が必要になるのです。  お心当たりのある方は、脳神経外科を受診してみて下さい。

2007.5.17 平尾 順






 

 特発性低髄液圧症候群は、腰椎穿刺(医療上の必要性により、意図的に髄液を採取すること)などの明らかな外的誘因なく頭蓋骨の中の圧力が低下することによって発症します。主な症状は、頭痛です。立って15分以内に起こり、横になって30分以内に改善または消失する特徴的な頭痛が認められます。また、悪心・嘔吐、羞明、こわばり、めまい、複視、聴力障害なども多く認められます。原因は、脳脊髄液の漏出です。脳脊髄液の一日の産生量は約500mlで、成人では180ml前後の髄液が溜まっており、一日に3〜4回入れ替わっています。この髄液が、何らかの原因で水漏れを起こすのです。頭部外傷やむちうちなどが誘因になることがありますが、全く誘因がないケースもあるようです。確定診断には、RI脳槽シンチグラフィやCTミエログラフィで髄液漏出を検出しなければなりません。しかし近年では、MRIである程度の診断が可能になったことと、テレビ等で特集されたことなどから注目を浴びる様になってきました。

 この症候群の概念自体が新しいものであり、我が国における研究会も2年程前に立ち上げられたばかりです。診断基準が明確でなかったことと、この疾患自体があまり知られていなかったため、難治性の頭痛で、診断がつかずに、心療内科等に紹介されていたようなケースもあるようです。

 ほとんどの特発性低髄液圧症候群の患者さんは、安静、十分な水分の経口摂取、ステロイド剤の投与が奏功するとされています。しかし、これらの治療で改善が認められない場合に、漏出部位を確認の後、硬膜外自家血パッチの治療が必要なことがあります(まだ保険適応になっていません)。硬膜外自家血パッチが無効の場合に、髄液漏出部位の閉鎖を目的とした手術も行われています。お心当たりのある方は、脳神経外科の受診をお考えください。

2007.4.5 平尾 順






 

 疫学研究によると、わが国の片頭痛の有病率は約8%です。思春期を迎える迄は男女差はないのですが、思春期以降は、男性での有病率が4%に対して、女性は13%と男性の約4倍もの有病率となります。生理前後の女性ホルモン(エストロゲン)の急激な変化が、片頭痛に関与しているとされています。これを月経時片頭痛といいます。

 脳幹部におけるセロトニン受容体の近傍に、約7割のエストロゲン受容体が存在していることが知られています。しかし、脳においてセロトニンとエストロゲンがどのように連動しているのかは、まだ解明されていません。したがって片頭痛の治療におけるエストロゲン補充治療にも賛否両論があり、一定の見解は得られていません。

 月経時片頭痛の特徴は、約70%が月経の2、3日前に出現し、月経が始まるとむしろ出現しにくくなります。少数例ですが、月経直後に片頭痛が出現することもあります。また、妊娠中には片頭痛発作の回数が減少もしくは消失することが多いのです。また更年期と言われる年齢になると、片頭痛の発作は減少します。それでも年に数回は片頭痛に特徴的な拍動性の痛みがみられることも多いのです。こういったことからも、片頭痛に女性ホルモンの変動が関与しているのは明らかと考えます。

 非ステロイド系消炎鎮痛剤のなかでもナプロキセンは、血小板からのセロトニン異常放出を抑制することにより効果を発揮すると考えられています。また、三環系抗うつ薬であるトリプタノール錠やトフラニール錠は、更年期以降の片頭痛予防に有効とされています。最近では、片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤の有効性も認められています。こういった薬剤による治療は、突然襲ってくる片頭痛発作に対する不安感から患者さんを解放してくれます。頭痛でお悩みの方は、脳神経外科を受診してみてはいかがですか。

2007.3.8 平尾 順






 

 頭痛の原因となる明らかな原因が認められず、繰り返し頭が痛くなる状態を、慢性一時性頭痛と言います。1990年代に、トリプタン系薬剤と言う、片頭痛によく効く薬が開発されました。一方で、こういった鎮痛薬の使い過ぎから、薬によって誘発される頭痛の報告が見られるようになってきました。

 何年も頭痛で苦しんできた方が、片頭痛と診断され、薬を処方されたとします。「これまでの薬と違って、とても良く効きますよ」という医者の言葉を半信半疑で聞いて持ち帰った患者さんが、頭痛が生じた時にこの薬を内服すると、まるで魔法のように痛みが消えました。長い間頭痛に苦しんできた方には、まさしく、魔法の薬です。それ以後、痛みが生じる度にこの薬を飲むようになりました。はじめは月に4錠ほどであったものが、次第に数が増えて、月に20錠以上飲まれるようになりました。薬の効果は一時的にはあるものの、頭痛は毎日のように起こるようになり、薬の内服間隔は短くなってきます。このような状態を、薬剤乱用頭痛と言います。

 薬剤乱用頭痛の特徴は、両側性で、圧迫感や締め付け感が混在していて、寝込む程ではありませんが、我慢できない痛みです。

 教科書的には、原因となっている薬の内服を中止すれば、連日生じる痛みは2ヶ月以内に消失して以前のパターンに戻る、とされていますが、患者さんの多くは、この2ヶ月間を我慢できません。そうやすやすと解決しないのが、この頭痛の状態なのです。

 こういうことを十分に説明しないで、魔法の薬を投与してしまうと、薬剤乱用頭痛を作ってしまうことになるのです。頭痛の治療には、治療開始時点で、概ね30分近くの診療時間を要するのです。

 もしも、頭痛の薬を1ヶ月に10錠以上飲んでいる場合には、薬剤乱用頭痛になっている可能性があります。一度、脳神経外科を受診してみて下さい。

2007.2.8 平尾 順






 

 外来診察をしていると、「病院で測る血圧だけ高いんです」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、本当なのでしょうか? 自宅では130/80mmHg位で、病院では160/93mmHgという方は、高血圧ではないのでしょうか? 私自身、このような状態の患者さんが脳出血を起こした経験を持っています。日常生活の中では、緊張することや興奮することはしばしばあります。そのような時に血圧が上がって、出血を起こす可能性があるのです。

 心筋虚血や脳卒中の発作は、午前中に多いことが知られています。これは、モーニングサージと言われる交感神経の作用により、早朝に一過性に血圧が上昇することが関係すると言われています。この、朝の血圧の上昇をコントロールすることは、臨床上非常に大切なことです。しかし、脳卒中や心筋虚血は朝だけに起こるわけではありません。私の外来には、自宅で血圧を測り、その値を几帳面にメモして持ってきてくださる方々がいらっしゃいます。その多くは、毎朝、もしくは朝と夕方に血圧を測っていらっしゃり、降圧剤を処方する際にとても役立ちます。

 そこで、このような方々に、私がお願いさせていただくことがあります。それは「月に一〜二日だけ血圧を測る日を作って、一日の血圧の変化を見ていただけませんか?」というものです。朝起きて直後、朝食後、掃除が済んでから、昼食前後、午後買物に行った後、夕食後、奥様もしくはご主人とケンカされた後、入浴の前と後、就寝前というように、一日の中での血圧の変化を記録していただくことをお薦めしています。人によっては、かなりのアップダウンが認められることもあります。

 一日を通じてのご自分の血圧を知っておくことは、脳卒中を予防する上でとても大切なことです。白衣高血圧は、高血圧症の入口です。一度、一日を通しての血圧測定をお試しください。

2007.1.11 平尾 順






 

「お財布どこにおいたかしら?」「家の鍵かけたかしら?」なんてことがありませんか? こういう症状で、脳神経外科を受診される方がいらっしゃいます。認知症を心配されているのだと思いますが、これは認知症なのでしょうか?

 認知症とは、一度正常に発達した知的機能が、後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活に支障をきたす状態です。文頭のようなケースが認知症ならば、40歳以上の方のほとんどは認知症の診断になってしまいます。まず、認知症とは何かを知ることが大切です。説明を進めていき、脳神経外科医が関与できることをお話ししたいと思います。

 老年期に痴呆をきたす疾患には、アルツハイマー型痴呆を代表する脳の変性疾患以外に、感染性疾患、脳血管性疾患、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫といった脳神経外科で治療可能な疾患、内科疾患、薬の副作用によるものなどがあります。

 認知症専門の医師とは異なり脳神経外科医は、変性疾患以外の病気を否定する所から診断にたどり着いていくのです。除外される病気は、手術で治療可能な疾患が含まれています。さらに、MRIなどの画像診断や神経心理検査によって、認知症かどうかを絞り込んでいくという手法を取るのです。診断がついた時点で、アルツハイマー型痴呆に対して、唯一認可されている薬物:塩酸ドネペジル(アリセプト)の投与を開始します。

 診察→診断→治療とつなげることで、患者様本人だけでなく、ご家族の負担を減らすことができるのではないかと考えます。進行性の疾患ですので、完全に治癒させることは不可能です。治療をしても、徐々に進行していくことは避けられません。しかし、進行を遅らせ将来の方向性を知ることは、ご本人だけでなく、ご家族に“心の準備をする時間”をご提供できると考えています。ご心配な方は、一度脳神経外科を受診してみて下さい。

2006.12.7 平尾 順






 

 頭痛を自覚されたことのない方はいらっしゃらないのではないでしょうか。しかし、頭痛を訴えて病院に行っても、一般的な鎮痛剤だけが出されるだけのことが多いようです。頭痛の原因がはっきりせず、繰り返し頭が痛くなる状態を慢性一時性頭痛といいます。この中には、片頭痛、緊張性頭痛などがあります。最近ではストレスや不眠に伴う頭痛も多く見られます。

 こういった頭痛の分類はあまり注目されることが無く、一連の頭痛症候群として扱われてきましたが、トリプタン系薬剤という片頭痛によく効く薬が開発されてからは、頭痛に対する考え方が変わってきました。欧米では、慢性頭痛患者さんの頭痛発作による生産性の低下との関係から、社会的な対応の必要性が広く認知されています。我が国でも近年の社会不安から、心療内科的な観点と脳神経外科的な観点の双方からの頭痛の治療が見直されるようになりました。いずれの疾患に関しても、治療の第一段階は、怖い原因(くも膜下出血や腫瘍)を否定して正確な診断をつけることです。

 片頭痛は、片側の脈打つような痛みが特徴で「頭の中に心臓があるような感じ」といわれます。痛みの程度は強く、日常生活に支障をきたすことが多いようです。筋緊張性頭痛は、簡単にいうと肩こり頭痛です。一日中同じ姿勢で仕事をしていたり、長い時間コンピューター画面を見ている方に多く、持続性の痛みで す。比較的持続時間が長く「しめつけられる感じ」です。この頭痛をお持ちの方には、社会的なストレスや不安、うつを持っていらっしゃる方が見受けられます。また、鎮痛剤を長い間服用しているために、薬剤誘発性頭痛に移行している場合もあります。

 各病態にあった薬剤の選択が必要です。また、ストレスや不安、うつが隠れていると、薬の効果が得られないことがあります。軽い安定剤の併用が非常に有効なことがあります。お悩みの方は、脳神経外科を受診してみて下さい。

2006.11.9 平尾 順






 

 かき氷を食べていて、眉間のあたりにツーンと痛みを感じたことがありますよね。これは、舌咽神経の過剰刺激による「アイスクリーム頭痛」と言います。これとは違って、一般的な頭痛は、三叉神経が何らかの原因で刺激を受けて生じるものです。

 一般的な頭痛とは違って、顔面の一部分が、局所的に非常に強く痛む病気があります。痛みは突発的に起こり、激痛もしくは電撃痛です。患者さんの多くは、痛みのために顔を覆い、しばらくはお話が出来なくなるほどの痛みです。しかし、この痛みは、数秒もしくは数十秒後には嘘のように消失してしまいます。この病気を「三叉神経痛」と言います。痛みの原因は、三叉神経そのものが動脈にあたって刺激を受けて生じるのです。つまり、神経そのものの痛みです(例えると、虫歯の痛みの強いものと考えて下さい)。この痛みは、食事、歯磨き、洗顔、ひげ剃りなどで誘発されるために、痛みに対する恐怖心のため、食事が出来なくなったり、ひどい場合には、水分もとれなくなって脱水症状になってしまいます。口の中が痛む方では、診断がつかずに、歯科で何本も抜歯を繰り返された方もいらっしゃいます。

 三叉神経に対する治療は、最終的には手術しかありません。しかし、一時的には、薬で完全に痛みをコントロールすることも可能ですし、ペインクリニックでブロック治療を選択することも可能です。また、最近では、ガンマナイフやサイバーナイフを使った定位放射線治療も行われています。

 まずはきちんと診断をつけて、症状の強さと年齢などを考慮して、治療法を選択すべきです。個人的には、全身状態が許すのであれば、手術をお勧めしています。ただし、手術には全身麻酔が必要ですし、入院期間は十日前後を要します。  お悩みの方は、まず脳神経外科医を受診してみてください。

2006.9.14 平尾 順






 

 自分の意志とは無関係に体の一部が動くことを不随意運動といいます。その中でも、顔の不随意運動は半側顔面けいれんと呼ばれます。これは、字のごとく顔の左右どちらか片方のみが自分の意志とは無関係にピクピク動くもので、四十歳以上の成人、特に女性に多く見られます。症状は眼の周囲、特に下眼瞼から始まります。痛みは全くありません。最初は、症状も軽く、少し気になる程度ですが、徐々に回数も強さも進行していきます。やがて頬から口周辺にも及び、目が閉まり、顔半分が外側へ引っ張られるような動きとなっていきます。顔が自分の意志と無関係に動くことは、端から見る以上に大きなストレスです。女性の方は美容的な面で治療が必要になることもあります。

 半側顔面けいれんの原因は、かつては不明とされていました。今でも「精神的なものです」などと言われて、精神安定剤を投与されている患者さんもいらっしゃいます。'70年代後半に、「半側顔面けいれんの原因は、脳の血管が顔面神経を圧迫することであり、その血管を移動させることでけいれんが治る」と、アメリカのジャネッタ先生によって報告されました。我が国でも手術が行われています。一方、2年前からボツリヌス毒素局所注射が保険適用になりました。この治療は、ボツリヌスが作り出す毒素を抽出し、これをけいれんがおこっている筋肉に注射して筋肉を麻痺させて、けいれんを抑えるものです。効果は3〜4ヶ月持続します。

 どちらの治療を選択するかは、症状の強さと年齢などを考慮して行うべきですが、個人的には、全身状態が許すのであれば、手術をお勧めしています。ただし、手術には全身麻酔が必要ですし、入院期間は十日前後を要します。お悩みの方は、まず脳神経外科を受診されることをお勧めします。そのうえで、症状に合った治療法を選択することがもっとも大切です。

2006.10.12 平尾 順


平尾順
平尾 順 院長
脳神経外科
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
南大沢メディカルプラザ
田村クリニック