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循環器内科コラム

高血圧と塩分制限1-高血圧でない人も塩分制限を-

高血圧と塩分制限

 高血圧治療の基本は塩分制限です。糖尿病治療の基本がカロリー制限であるのとよく似ています。 特に日本人の塩分摂取量は諸外国と比較してもかなり多く、一日あたりおよそ11gと考えられています。戦後間もない頃の東北地方では25gくらい、さらに 江戸時代に遡ると50gであったとも言われています。確かにその頃と比較すれば現代人は塩分摂取量が減少していますが、イギリスにおける国民一人あたりの 塩分摂取量が9g台であることを考えると、まだまだ大量の塩分摂取国と言えます。


 日本では一日の塩分摂取量を一般の人を対象に9g/日以下、高血圧の人には6g/日以下にするように指導しています。
外来で高血圧の患者さんに塩分摂取量を減らすようにお話しすると、皆さん「なんだあ。俺はもう味のないものしか食べちゃいけないんだ」とがっかりされるよ うです。しかし、イギリスでは一般の国民に対して一日6gを目標に減塩するように指導していることを考えれば「俺たちだけが…」というものではありませ ん。また実際に減塩している方は現在食べるものが美味しく感じられ、以前食べていた味の濃いものは塩辛くて食べられないとおっしゃいます。つまり薄味に慣 れて自分の味覚が変わってくるのです。ですから、薄味は決して美味しくないものではありません。


 大部分の家庭には「家の味」というのがあって、好みの塩加減は家族内で同じ様なレベルにあるように思えます。濃い味はおじいちゃん・おばあちゃん→お父 さん・お母さん→子ども達というように、我が家の味として受け継がれて行きます。確かに高血圧は遺伝的要素があると考えられていますが、代々受け継がれる 「塩辛い味」も大きな役割を果たしています。どうせやるなら家族全員で減塩することをお勧めします。


  日本食は体に良い健康的な食事と思われがちですが、味付け一つで不健康な食事に一変します。 現在我々日本人はきわめて過剰な塩分を摂取しているという事実を認識する必要があり、高血圧でない人も含めて、余分に塩分を摂らないことではなく現在の塩分摂取量をできるだけ減らしていくことを心掛けるべきだと考えます。

2011.05
循環器内科 塚本 三重生